第533回「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」 (監督:幾原邦彦)
鳳学園に転校してきた男装の少女・天上ウテナは、「薔薇の刻印」と呼ばれる不思議な指輪を手に入れたことで、褐色肌の少女・姫宮アンシーを巡って激しく戦いあうデュエリストたちの戦いに巻き込まれていく・・・
「美少女戦士セーラームーン」や「輪るピングドラム」で有名な幾原邦彦が、クリエーター集団ビー・パパスを立ち上げて製作した「少女革命ウテナ」の劇場版オリジナル作品。原作は見たことありません。
奇抜なヴィジュアルや、不可解な設定、同性愛・近親相姦といったタブーに踏み込んだ大胆なシナリオ、これに加えて演劇的な演出や作画の良さがあいまって、大変独特かつ良質なアニメーション作品に仕上がっている。一言で言うと、ハイセンス。一つ一つの台詞から滲み出る耽美な感じや、キレの良い演出は、見ていてうっとりする。ところどころ意味がよく分からなかったり、展開が急すぎたりもするけど、それも演出のうちというか、何もかもが絶妙に調和が取れた感があって、見ていてとても気持ちが良かった。終盤の展開は、それまでの流れからするとかなり意外だが、これがまた妙なアクセントになっていて盛り上がる。良き時代のアニメーション映画、という感じ。
難解と有名な作品だが、大事な部分はちゃんと分かるように作られている難解さなので、とっつきやすいとも思う。これを機にアニメ版見てもいいかなとも思うけど、やや敷居が高くも感じる。アニメ史に残る名作の一つと考えて良い。見るべし。
第534回「サカサマのパテマ」 (監督:吉浦康裕)
厳しい規律で統制されたアイガ国の少年エイジは、ある日”地面から落ちてきた”不思議な少女パテマと出会う。しかし、パテマは治安警察によって捕えられてしまい・・・
「イヴの時間」を手掛けた吉浦康裕による完全オリジナル劇場用アニメーション作品。重力のかかり方が完全に逆であるがゆえに、空に落ちていく人々のいるファンタジー世界が舞台。「イヴの時間」が面白かったので期待していたが、やや肩すかし。
一言で言うと、薄い。設定や着想は面白いのだが、キャラクターが誰も彼もどこかで見たことのあるようなのばかりで、魅力的に感じなかった。描くべきことの多さゆえに、一つ一つの描写が浅く、薄くなってしまうのはある意味しょうがないのだが、最初から最後までそんな調子なので、飽きが来るのも早かった。特別作画が良かったり、演技が感動的だったりするわけでもないので、結果として、凡作以下という印象が強い。
特に悪役側に思想がなく、行動の説得力が皆無なのが気になる。こういうファンタジーにありがちな”悪い王様”の代名詞みたいなキャラで、子供が考えたようなセリフばかり言うので、出てくるたびに興醒めした。
「イヴの時間」のキャラは、平凡っぽく見えて少し変わったところがあり、魅力的なメンツが多かっただけに、ギャップが大きい。吉浦氏には、この作品での反省を活かして、新作では頑張って欲しいところである。
第535回「映画ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ」 (監督:今千秋)
大活躍中のハピネスチャージプリキュアは、ある日人形劇用の人形つむぎに誘われ、人形の国に旅立つ。つむぎは、プリキュアたちにサイアークの危機から国を救ってほしいと願うが・・・
現在テレビ放映中の「ハピネスチャージプリキュア!」の劇場用アニメーション作品。監督は、「のだめカンタービレ」などを手掛けた今千秋。キャラデザ、作画監督は大田和寛。東映アニメーションにしては珍しく、メインスタッフを外部起用している。
昨年からの傾向として、子供向けにしては重めのテーマを扱っている。足を痛めた少女つむぎは、「プリキュアにも救えないもの」の象徴として登場し、主人公めぐみは、自分の力の限界に葛藤する。このテーマを描き切るには、70分はやや短く感じる。ギャグパートなどもあるので、ドラマ部分は短めになってしまっており、ややもったいないと感じた。それから結末。難しいラインだけど、こうではない何かも見たかった気がします。
一方で、作画の美しさがとても際立つ。本編よりも5割増しぐらいで可愛く描かれたキャラクターはとても魅力的だし、よく動くし、それだけで実は満足だったりw 特に舞踏会のシーンでドレスを着たメインキャラたちは要注目。ていうか、このクオリティで毎週放送してくれませんか?
つむぎ、ジークといった劇場用新キャラも魅力的で、満足度高し。相変わらずのハイクオリティなので、ブルーレイ購入は確定です。オールスターズの新作、「春のカーニバル」はどうなるやら・・・w
第536回「THE NEXT GENERATION -パトレイバー- 5章」 (監督:辻本貴則、田口清隆)
実写版パトレイバー第5弾。今回はいつもお馴染み辻本監督のシリーズ最終作「遠距離狙撃2000」と、エピソード0以来の登場となる田口監督による「クロコダイル・ダンジョン」を収録。前回の微妙な感じを払拭できるか!? 色々な意味で、期待通りの内容でした。
<エピソード8>:公安外事3課からカーシャに与えられた任務は、ロシア高官暗殺の阻止。即ち、暗殺者のカウンター・スナイピング。しかし、この暗殺者にはある秘密があった・・・
カーシャを主人公に据えたシリアスドラマ。かつての師を狙撃するため、彼がどこからどうやって暗殺を企んでいるのかを、カーシャが“孤独”に捜査していく。スナイパーライフルに関するウンチクやゼロインのシーンが妙にマニアックで良いのと、狙撃主同士の静かな戦いが見もの。これまでの作風は何だったのかと思わせられるぐらい真面目なお話なのだが、やっぱりアホなテイストも健在で、「ゴールゴー♪」とか言いながら茶々入れてくる隊員の姿には、苦笑せざるを得ない。もちろん、これは、良い意味なのだけど。
にしても、太田莉菜という女優はすごい。めちゃくちゃ真面目だし、雰囲気あるし、これで子持ちってんだから、ぶっちゃけありえない。真野ちゃん、存在感ないぞ!!頑張れ!w
<エピソード9>:旧特車2課棟があった埋立地から連れ出された白ワニが、推定2億の真珠を体内に蓄えていたことがニュースになる。これを聞きつけた整備員たちは、封鎖された埋立地地下へと潜入。しかし、彼らが戻ってくることはなかった。そして今、二課隊員たちがレスキューミッションに挑むが・・・
テレビシリーズからのファンにはお馴染みの「地下迷宮」シリーズ、まさかの第3弾。元々田口監督という人が「黒い三連星」を実写化したいと言っていたのだが、何の因果かこちらが実写化される流れになったらしい。驚くことに、話はちゃんと地続きになっていて、アニメ版へのオマージュも随所に見られるのだから、驚き。
話としては、「しっかり面白くない」というか、撮影にかかった費用、労力と見合わないチープなノリといつも通りの残念な展開で、もはや一般受けは絶望的なのだけれど、そのテイストが逆に安心感を生んでいる気がして、逆にじっくり見れてしまう不思議。どんどん悪い状況に追い込まれていく隊員の姿が、なぜか頼もしい。
こういう話は、パトレイバーだからこそだと思う。満足度は、割と高いです。
という感じで、5章終了。今回は、期待通りと期待はずれ、両方ありながら、満足度は高いです。そして、次月はついにレイバー戦が描かれるとな!? レイバーが出ない方が面白いことで有名なパトレイバーシリーズですが、こういう展開も嫌いじゃないです。楽しみ。
第537回「溶解人間」 (監督:ウィリアム・サックス)
カルト映画を専門としてソフト販売をする「スティングレイ」から人気ホラー映画が販売開始! 今回は、70年代後半を賑わせたB級ホラー作品だ! ということで、Amazonでの注文待ったなしでした。
ベム、ベラ、ベロではなくて、溶ける方の「溶解人間」。土星探索から帰還した宇宙飛行士は、原因不明の事故により、肉体が溶けはじめていた。そして、なぜか人肉を食い漁る化け物に変化してしまったのである。溶解人間ことスティーブの友人であり医者でもあるネルソンは、彼の行方を突き止めるため、ガイガー・カウンターを片手に森をさまよう。
普通に見たら面白くない作品です。演出は凡庸、展開はありがち、テンポは悪い。それでも異様に気合の入った特殊メイクと、たまーにキラリと光る悪趣味なセンスが作品に”幅”を持たせていると感じる。滲み出る製作者の苦悩や作品を完成に導く努力が、画面の奥に見えるような気がします。このセンスがもっと活かされていればなぁw
川を流れる生首をゆーっくり追っていくシーンが、妙に頭に残る。これだから映画馬鹿は愛される。マニアは必見、素人お断りの問題作。
第538回「コードギアス亡国のアキト 第2章「引き裂かれた翼竜」」 (監督:赤根和樹)
06年に放映されたテレビアニメ「コードギアス」シリーズ最新作。全4章を予定している「亡国のアキト」シリーズは第二弾。前作を見たのが13年4月なので、一年半ぶりの視聴となります。
アキトらによって捕縛された3人のイレブンは、弾道ミサイルを利用したユーロピアの敵地強襲作戦への参加を命じられるが、これに逆らおうとして一計を案じる。一方で、部隊長レイラ・マルカルは、「誰も死なせない」ことを約束し、彼らを説得しようとするのだが・・・
今回もすごい、というか、今回から本格的にブーストしてきたなぁという感じ。キャラクターの関係性が見えてきたり、謎が増えてきたことで、一気に物語が軌道に乗ってきた。一番の見せ所である戦闘シーンも大幅に増えていて嬉しい。3DCGを駆使して描かれるNFの戦闘は、繊細かつ大胆。これだけでも一見の価値がある。それだけでなく、ストーリーのメインストリームである作戦は、ブリーフィングから遂行までがじっくり丁寧に描かれているため、大変臨場感高く楽しめる。こういうのが”見たいロボットアニメ”だなと思う。
アニメならではのお約束とか、説明不足とか、色々あるけど、ノリが良いから良し!とも思う。そういう側面も少なからずある作品ですが、これまでのギアスを楽しめた人なら間違いなく楽しめるかと。3章は、15年夏公開らしいですが、ファンに忘れられてないことを祈りますw 続きも期待!
第539回「ケルベロス 地獄の番犬」 (監督:押井守)
特殊機動警察「ケルベロス」の叛乱事件から3年。出所した元隊員である乾(藤木義勝)は、騒乱の最中国外逃亡した部隊長都々目紅一(千葉繁)を追って台湾へ飛ぶ。乾は紅一の愛人と呼ばれる少女タンミーと出会い、紅一を追う旅を始めるが・・・
巨匠押井守がライフワークとする「ケルベロス」シリーズの第二弾。前作「紅い眼鏡」のミッシングリンクとなる作品で、近年DVDソフトとして再販されたものを購入して視聴。やっぱり、押井作品はいいな~というのが、率直な感想。
”忠誠”を誓うべきものに裏切られ、当て所なく彷徨う男。故郷を離れて辿り着いた台湾の街並みは、どこまでも非現実的で、自分という存在が霞んで見える。不思議な少女タンミーの後を追い、ただただ進み続ける道の先に未来はあるのか? 旅はいつまでも終わらないように感じられる。時間は止まって、心には冷たい風が吹いて、それでも太陽は熱く照りつける――― ここにある押井哲学は、哀しさと空しさの美学だ。純粋すぎるがゆえに世界を拒絶した男の鎮魂歌だ。
思うに、男という生き物は馬鹿でどうしようもない。ゆえに、いつでも自分を従わせる何かを求めていて、その意味で、非常に犬的なのだ。これは生き様であり、サガなので、もうどうしようもない。この作品は、そのどうしようもなさが非常によく描かれている。すごくゆっくり流れる時間を、言葉少なく追っていく物語の運び方は、この哲学が宿る媒体としてピッタリだ。どこまでも頽廃的で、ノスタルジックで、物寂しい。対照的に、クライマックスは劇的で、暴力的。この緩急の中に、映像作品としての面白さがある。
今まで見ていなかったことが恥じられる。押井作品としては、らしさがよく出ている。ファンは必見。
第540回「キャスト・アウェイ」 (監督:ロバート・ゼメキス)
「フォレスト・ガンプ」を監督したロバート・ゼメキスとトム・ハンクスのタッグ作品。制作は2000年。
世界を股にかける運送会社フェデックスの管理職チャック・ノーランド(トム・ハンクス)は、原因不明の飛行機事故により、無人島に漂着する。漂流したいくつかの荷物と、ココナツしかな島で、チャックのサバイバル生活が幕を開ける・・・
本編のほとんどがトム・ハンクスによる一人芝居。無人島の生活に絶望し、時に希望を見出し、また絶望し・・・この繰り返し。バレーボールを人間に見立ててまで自分を鼓舞する姿は、非常に憐れだが、一方でどこか滑稽でさえある。1分1秒を争う「時間」の世界に生きていた男が、生きるためにもがき続ける姿には、妙なシュールさがある。
生きるための様々な工夫やアクシデントの連続などが中心となる無人島のシーン。この静かな迫力も魅力的だが、チャックが島を脱出してからの描写が長いのも、この作品の特徴だ。現代版浦島太郎になったチャックを待っていた現実は、あまりにも残酷。「予想通りすぎる」からこその残酷さ、とでも言えるかもしれない。かつて愛した恋人は、今・・・ この続きはあえて書かないでおくが、まさに胸をえぐられるような感覚を持った。人は何のために生きるのか。そんな壮大な話に勝手にしてしまっていいのかとも思うが、この映画はそういう映画だ。
ややキレイゴト的感動感(?)があるので、すっきり良かったと言い切れないのだが、ずっしり心にのしかかる独特の感じは良いと思う。「よくある感動」と言われれば、確かにそうかも、とも思う。
第541回「THE NEXT GENERATION -パトレイバー- 6章」 (監督:田口清隆、湯浅弘章)
実写版パトレイバーもセミファイナル。7章は、GW公開の長編作品の前哨戦となる予定なので、実質的にこれまでのシリーズの総括的なポジションにあたる。エピソード10は、実質的に初のレイバー戦を描く「暴走!赤いレイバー」。そして、エピソード11は、明の過去が明かされる「THE LONG GOODBYE」。
<エピソード10>:テロリスト蜂野が脱走をした。一路新潟を目指す彼の目的は、極秘裏に運搬されたソビエト製軍用レイバーRT99の強奪。これに対応すべく、明と佑馬は新潟へと出張することになるが・・・
これまで何のかんのでやってこなかった「レイバーvsレイバー」をテーマに、激動の一夜を描いた一本。かなり短い時間ではあるが、レイバー戦は確かに凄い。ロボットは皆フルCGで描かれるわけだが、全くCG感を感じさせないリアルな作りこみには脱帽。あまりにリアルすぎて、逆にインパクトが薄いと感じられるほどである。
一方で、そこに至るまでのドラマがかなり物足りなくて、いまいち盛り上がりきらなかった。せっかく再登場した蜂野もあんまり活躍しないし、明と佑馬の話も、なんだか煮え切らない。
メイキングの方が楽しめるという、やや残念な感触。やっぱり、レイバーが動かない方が面白いんじゃなかろーか?w
<エピソード11>:明の元に届いたのは、高校の同窓会の招待状だった。宿直当番にあたる日にもかかわらず、佑馬は明をそそのかし同窓会へと向かわせる。そこで明は、喧嘩別れしていた友人・高遠と再会する・・・
エピソード10に対して、こっちは完全にレイバーのレの字も出ないようなエピソード。これまでほとんど描かれてこなかった主人公(?)明の過去や内面にクローズアップした青春劇である。
過去のシーンを何度もフラッシュバックさせながら、じっくりと描かれる人間ドラマ。若いころの、甘酸っぱい(と書くのは何だか恥ずかしい)思い出と、そこから少し変わった大人の明。未来への不安と希望。清濁入り混じる中、夜の町はいつまでも明るく光っている。
・・・とかそれっぽく書きましたけど、正直よう分からんかったです。雰囲気は良さげだし、何かはじわっと伝わってくるのだけど、この話は何の話なのか、私の中ではあんまりはっきりしていません。作品のせいというよりは、私の理解不足な気がしています。でも、人の青春なんて、そんな簡単に分かるものではないということなのかもしれない。「ろくでもない奴が、やっぱりろくでもない奴だと分かった」話なんだろう・・・と思っているのだけど、何となく腑に落ちないところも、あったり。人の出会いと別れは不思議なものだ・・・というと、少し乱暴すぎる気も、したり。
というわけで、6章でした。
確かに、ある意味集大成な1本。良いところも悪いところも、共に集約されている感じはする。この味わい深さは、もうちょっとちゃんと噛み締めたいと思った。ともあれ、次でラストなんですよね。次は激情でのブルーレイ販売はなしとのことなので、しっかり映画観で見てみたいと思います。
第542回「トーキング・ヘッド」 (監督:押井守)
2ヶ月後に公開を控えたアニメーション映画大作「トーキング・ヘッド」を手掛ける監督丸輪零が失踪した。「私」(千葉繁)は、プロデューサーからの依頼を受け、この曰くつきの作品を公開に導くべく、暗礁に乗りかけたプロジェクトに関わり始めるが・・・
押井守による実写監督作品。映画制作の舞台裏を、かなり挑戦的なタッチで描いている。色々語るべきところのある作品だとは思うのだけど、私はほとんどついていけなかった。
物語の進行とともに、なぜか殺されていく製作スタッフたち。事の真相を明らかにする動きがあるようでなく、あれよあれよとよく分からないままにシーンばかりが繋がっていく。「物語」としての映画ではなく、「映画」としての映画であろうとしたこの作品は、映画を作るということに内包される矛盾をテーマにしている。それってどういうこと?と聞かれても、私もよく分からない。とにかく、哲学な映画である。(とてつもなく、投げっぱなしな表現だが
映画を作ろうとすること自体を映画にしようとすると、当然ながら、「映画を作ろうとしている人たちの映画」を自分たちが作ろうとしなければいけない。製作者は、映画を作ろうとしている人たちを描くために、映画から一歩遠のかなければいけないのだけど、遠のいた先がまた映画を作る現場であれば、結局自分たちが作り上げようとしている映画が、描きたい映画そのものなのか、また別の自分たちの映画であるのか、境界が非常に曖昧になる。映画を作ろうとすることは、とりもなおさず、現実的でないということだと思うのだが、はて、その解釈で良いのだろうか。
もう何度か見てみたいと思うのだけど、割と気力も体力も使うので、素人にはおススメしません。映画好きなら、理解できるまで見た方がいいかな、どうだろう。
第543回「仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル」 (監督:柴崎貴行)
現行放映中の「仮面ライダードライブ」と、昨年度放映していた「仮面ライダー鎧武」の競演で送る毎年恒例のMOVIE大戦シリーズ最新作。前作からレジェンド勢の登場がなくなったが、今回も完全に鎧武とドライブのみの構成。詰めるべき要素を詰めるべき尺できっちり詰めてきたという意味で、満足度の高い作品に仕上がっている。大きく3部構成なので、一つ一つ見ていきたい。
鎧武篇「進撃のラストステージ」: 宇宙の神となり、地球を離れて新天地で暮らす紘汰の元に、機械生命体メガヘクスが襲来。舞をさらい、地球を機械化することを宣言して飛び去っていったメガヘクスを追う紘汰だが、激闘の末爆散してしまう。そんな折、残された沢芽市のヒーローたちが、再び立ち上がろうとしていた・・・
これタイトルどうにかならんかったんかw まあよい。内容は中途半端なところもあるけど、とにかくアツい! 紘汰の爆散に始まり、龍玄の激闘(舞救出!)、斬月の復活、そして再び立ちはだかるデューク! 「鎧武」というタイトルながら、主に活躍するのは脇役たち。これが堪らないんです。テレビシリーズを追ってきた身からすると、呉島兄弟の共闘はそれだけで目頭が熱くなるし、メカ戦極凌馬の登場にもニヤニヤが止まらない。即ち、絶妙に「分かってる」脚本なんですよね。
本編の後日談としても非常に上手く機能しているし、アクションもカッコいい。鎧武登場からは若干グダってしまったような気がするので、ここでもっとアツく盛り上げてほしかったという意味で、中途半端さも感じる。でも、前回の劇場版の出来を払しょくする内容だとは思います。
ドライブ篇「ルパンからの挑戦状」: 世間を騒がす怪盗アルティメット・ルパンが挑戦状を叩きつけた相手は、泊進ノ介こと仮面ライダードライブだった。その目的は、「仮面ライダー」の称号の奪取。彼の正体は、ベルトさんがかつて開発した強化ロイミュードだった・・・
これもタイトルどうにかせえよw というか、ルパンて・・・綾部て・・・という前評判とは打って変わって、割と良作だったと思う。ベルトさんの過去であるとか、本編に登場しているチェイスの正体に関わる謎であるとか、物語における重要なファクターがじゃんじゃん出てくるのもそうだし、「仮面ライダーとは何か?」ということをテーマにしているので、話としては相当濃い。泊進ノ介が本当の意味で「仮面ライダー」になるエピソードとして、及第点の出来。
ただ、やっぱり「なんでルパンやねん」というのは思うし、「なんで綾部やねん」というのは、思うよね、それは仕方ないよね! 最後の方の展開がやや強引なのも残念。何かアツいしまあいいか!とも思うけれど。
ルパンはまた本編にも登場しそう。実は、良いライバルキャラです。
MOVIE大戦篇: 鎧武とドライブが合流しての大合戦! メガヘクスをやっつけろ! という、単純な部分だけど、細かいところが凝ってて全然気が抜けない。仮面ライダーバロンの復活、鎧武チーム4名初の共闘! ドライブアームズとタイプフルーツ、そして最後はトライドロンで宇宙決戦。盛りだくさんすぎですw 特に最後の宇宙決戦は面白かった。進ノ介と紘汰って、実はめちゃくちゃ気が合うみたいで、アドリブ込の掛け合いが面白すぎるw 今更過ぎる果汁ブシャー攻撃とか、意外すぎる攻撃方法にも目を見張った。笑えて燃えれる良パート。
と、いう感じで、どこも押さえるところはしっかり押さえてある良作でした。ドライブについても、本編の序盤は微妙やな~と思っていたけど、キャラが立ってきたし、役者の演技力も上がってきたしでどんどん面白くなっている印象。これからの展開に期待!!
第544回「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」 (監督:高橋滋春、ウシロシンジ)
妖怪ウォッチがなくなった! 人間界を乗っ取ろうとする何者かの仕業と見たケータたちは、手がかりを得るべくケマモト村に。そこで出会った妖怪フユニャンは、ケータたちを60年前の過去に誘う。そこではケータの祖父であるケイゾウの姿が・・・
大人気「妖怪ウォッチ」初の劇場用作品。乗るしかないぜ、このブームの波に!とばかりに見に行ってきました。内容は、まずまずと言ったところです。
奇想天外な発想と、「誰をターゲットにしてるんだ」と首を傾げたくなる面白演出で好評のアニメシリーズと打って変わって、割と普通に劇場版してる感じ。短い中でいかに爆発的に面白くするかを狙ってるアニメシリーズからすると、ややのったりとしたストーリーテリングなので、ノリに慣れてくるまではやや退屈に感じるかも。ただ、相変わらずジバニャンやウィスパーのキャラは面白いし、ギャグもスパイスが効いているので、飽きたりはしない。新キャラであるフユニャンもカッコいいし、後半の妖怪大集合なんかも含めて、初の映画版として十分楽しめるレベルである。
というより、もはや社会現象といって差支えのないレベルのブームになっている作品を、その渦中にいる子供たちと一緒に見るということに意味がある作品。作品そのものの出来がどうなんてことは、実はどうでも良かったりするんです。とにかくこの勢いに乗って見てみれば良い。でも・・・とにかく、すごい人の量だった! 小学校にいる気分でしたw
来年も映画やるらしいので、見に行ってもいいかなとは思う。今年一年で、このシリーズがどう転んでいくかは、見ものです。